Poems

さくらひげの夢時計・完全版

かるがも電話が逆立ちして、
あしたの靴下をむしゃむしゃ食べた。
空にはメロン味のひつじ雲、
ぼくの耳からポエムがこぼれる。

午後三時、きゅうりのような時間に、
トンカチで叩いた時計塔が笑う。
「にんじん戦争は終わらない」って
パンツをかぶった星がささやいた。

セロリの涙に浮かぶ蛍光灯、
月見そばの中で鳴くペンギン。
水たまりの奥にピアノがいて、
サンダルをはいた魚と会話していた。

ほろ苦いバナナの叫び声が、
ざぶざぶ揺れる電車のカーテンを通って
オウムのうたた寝を起こし、
焼き鳥の夢を壊した。

ぼくは空気イスに座りながら、
逆さまの地球儀にキスをしていた。
「これが愛だよ」と、
ソースまみれの本棚が笑った。

フラミンゴのマフラーが燃える頃、
僕の影はカレーになって消えた。
だれも知らない階段のうしろで、
フクロウが九九を唱えてた。

レモン時計が逆回転して、
ひじきが空から降ってきた。
エレベーターのボタンが泣き出して、
スリッパたちが集会を開いた。

となりのくしゃみが電波になり、
信号機がくしゃくしゃ笑って転んだ。
タコのサラダがラップを始め、
ポストの口が愛を語り出す。

朝の砂漠ではヨーグルトが走り、
パイナップルの旗が風を切る。
ぼくはうしろ向きに前進して、
豆腐の海にスーツケースを沈めた。

時計仕掛けの犬がうたを歌い、
枕の中でうさぎが議論する。
天井から垂れるソフトクリームは
時空をねじ曲げるために存在していた。

もうすぐ木曜日。
月がマラカスの葬式を開く。
彼らはルンバの途中で倒れ、
靴下をまとって星に帰った。

金曜日には空気がシャボン玉を産み、
かたつむりの新聞が配られる。
ポストは読まないふりをして、
こっそり目玉焼きを収納していた。

土曜日には、冷蔵庫の中でライブ。
チーズのバンドが熱唱し、
トマトの観客が歓声をあげた。
指揮者はニンニクだった。

日曜日、ぼくは透明人間になり、
のり巻きの森でひなたぼっこした。
「おやすみなさい」と言った地平線が、
ジャムの海に沈んでいくのを見た。

ぼくの名前はバターだった。
でもそれを知っているのはスプーンだけ。
今日だけは誰にも言わない。
たとえ空がバナナになったとしても。

そして再び月曜日。
タンスの引き出しから詩があふれ、
シャワーの中でカラスが踊る。
カーテンの裏では地図が発酵していた。

数字たちは踊り、母音は泡になる。
文章は眠り、読点は旅に出た。
ページの端で息を潜める猫に、
世界の秘密が預けられている。

だけど、ぼくはそれを開かない。
開いたら、きっと傘が怒るから。
怒った傘は階段を滑って、
昨日の明日を潰してしまうから。